『ハチミツ/スピッツ』

1995年。目を覆いたくなる凶悪事件や自然災害の発生により、社会全体が混沌状態にある中で、少なくとも私にとってはたったひとつ、キラキラとした時間をくれたもの。それが、この年リリースされたスピッツの『ハチミツ』でした。

出会いは隣に住んでいた幼なじみのお母さんから。たばこやパチンコを嗜む旦那さんに怪訝な表情を見せていたおばさんが「これだけは感謝なのよ!」と言い出した理由は、おじさんがパチンコの景品として持って帰って来たこのCDに心酔してしまったからでした。

その感動をひとりでも多くの人へ伝えたいおばさんは、両隣・向かいのご近所さんへ1枚ずつ『ハチミツ』を配ってくれたのです。

ひょんなことから我が家の日常へお供することになり、休日の昼に我が家で流れる『ハチミツ』は、さらにカセットへダビングして車中でも流れ続けることとなります。

表題曲”ハチミツ”の瑞々しい前奏に始まり、「あ、聞いたことある・・」と親しみに引き寄せられるシングルカット曲”涙がキラリ”。軽やかに進むのに、でも都度ひっかかるフレーズたちが停止のボタンを押させてくれません。【戦闘機よりもあからさまな君の声/”歩き出せ、クローバー”】【羊の夜をビールで洗う/ルナルナ】。

そして個人的には後にも先にもJ-POP(J-ROCK)史上において、これほど唯一無二の世界観を醸し出す曲はないのではと感じている”愛のことば”【限りある未来を搾り取る日々から 抜け出そうと誘った君の目にうつる海】【くだらない話で安らげるぼくらはその愚かさこそが何よりの宝物】。

スピッツが大ブレイクを果たした本作。その後スピッツは、一般に持たれるバンドイメージを覆すべくロックバンドとしての存在感を意識した作品が続くのですが、この『ハチミツ』も聴けば聴くほどにロックなのです。ほとんどの楽曲制作を務めるVo.草野正宗は楽曲の普遍的なテーマは死とSEXであると公言しています。少年性と死生観、変態的な性癖が混在することを聞けば聞くほどに実感します。

私はこれからも雨が降れば”あじさい通り”を聴き、一緒に居たい人のことを想いながら”君と暮らせたら”を聴いていくのです。

私のマスターピースは『ハチミツ』です。